企画学園学園祭17

廊下のコーナーを曲がって、変な色した変な髪型がゆらっと現れた。
黒縁メガネにいつもの半袖ポロシャツとジーンズ、つい最近170を超した背丈。
その上両腕であんな風呂敷包みなんぞ重そうに抱えている姿は、統一感なく派手に飾り付けられた中、文化祭の人混みでも一際目を引いていた。
少しバランスを崩した所で生徒から心配気に声を掛けられている。荷物持ちましょうかとでも言われたんだろうか、年配でもあるまいにその台詞を貰うとは流石だ。丁寧かつ穏和にお断りする姿はおよそ現役女子高生2年には見えない。
因みにあの生徒も高2だったはずだが、同い年だと気づいていたのかは怪しいところだ。
ここまであと10mほど。俺がここであいつを待っているのは他でもない、あの風呂敷包みの中の代物に早くありつきたいからなのだが、普段滅多に出くわさない大人数の往来の中で早くも混乱しているあいつが実に愉快なので敢えて動かず見ていることにする。


さて、俺が主体で語るのはこれが最初になるな。
名前は矢崎海里(ヤザキ カイリ)という。いつかの番外編で今あそこにいる風呂敷婆さん(笑)と喋ってたのが俺だ。色々あって現在はあいつ…花野蘭(カノ ラン)の保護者の立場にいる。
私立企画学園理科教師、専攻は化学。
科学部の顧問でもあり、不定期ではあるが割と頻繁に実験をしている。実験テーマの提起は俺からの時もあるが生徒からの時も多い。
やはり意欲のある生徒が集まると扱き甲斐もひとしおだ。
そしてこの学園祭、我らが科学部は例年の参加型実験に加えてもう一つイベントを開くのだが―――

「ーっ、せ、先生…」
「よう、遠路遥々お疲れさん」
ようやく第一理科室に到達した蘭は早くも草臥れている。
遠路遥々とは言ったが別に他県から来た訳ではない。ただ、山中という極めてド田舎な環境下に住むこいつにとっては、ここだろうが普段通う公立高校だろうが等しく遠出なのだ。俺みたいに免許も無いしな。
ずっしりと重い風呂敷包みを取り上げてやると、ありがとうございますと頼りなく礼を述べる。それから廊下の張り紙を見遣り、目を伏せて小さくため息をついた。
「…さっき、青い目の如何にも女の子に人気がありそうな人から声を掛けられたんですよ。この学校って、海外からの生徒さんもいらっしゃるんですね」
荷物を心配してた生徒のことか。如何にも女子に…ああ思い出した、いつも俺の授業サボるあいつだ。そろそろ出席点が危ういが進級は諦めていると取って良いのだろうか。
「そうだな、あいつの他にも割といるぞ。今まで気付いてなかったか」
「うーん、見掛けてはいたと思いますけど、今年になってやっと認識できるキャパシティが空いたというか…。この学校、色々新しくて慣れないことだらけなんですよ」
「くくっ、何だそれ」
困ったような苦笑が返ってくる。
それを横目に俺が引き戸に右手を掛けると、蘭の顔は明らかに疲弊した。
「どうした?キャパシティ空いたんだろ」
「これは別問題です!」
理科室内が騒がしい。科学部員もいい加減気付いたんだろう。
こいつの到着に。
「まあ今年はなんの前触れもなくいきなりなんてことにはなりませんでしたけど…でもやっぱり目立つのは…」
「何言ってんだ十分目立ってたじゃねえか」
「ええっ!!?」
戸に掛けた手を右に引く。部員の思い思いの歓迎の声を受けながら、俺はその手で蘭の襟首を掴み引きずり入れていった。


『今年もやります!ディベート招待試合IN科学部!!
ゲストは去年と同じくあの人!リベンジに燃える部員達が手を変えて迎え撃つ!白熱の議論を見逃すな!!
議論開始:13:00〜』







ももちゃん〈id:perchflower〉へ!
いろんなキャラに喋らせたくてまた視点増やしてしまった…
でも海里はこの中では第三者の立場から見てるスタンスだからそこまで大きなことはしないよ(^_^;)
ところで文書くの久しぶりすぎて形になってるか心配…


企画学園シリーズは、私とももちゃんのオリキャラ達を架空の学園の中で一緒に青春させてみようって感じのコラボ小説です。
学園祭編は今までの物がももちゃんの所に上がってます。
この話の中では私の方からは(主要キャラ順→)白夏スズ、江ノ本サオ、ナギ、フィレ・クレス、花野蘭、矢崎海里の計6人を出してます。多い(笑)